驚いたのは組合側だけでなく、一方的に攻撃されっぱなしだった校長と教頭の職制だった。思わぬ援軍を得た職制側は、相川のほか非組の教員たちを集めて抵抗勢力を組織しようと考えた。
これまで組合側の欺瞞に満ちた卑怯なやり口をさんざん見てきた相川の心の奥底で眠っていた闘争心に火が付いた。
ところが組合側はこの闘争を単年度の一回きりのものと考えておらず、数の力で無理に押し切る様子はなかった。彼らはこれは継続的な運動であって、卒業式変革そのものに価値を置いていたわけではなかった。
一方、反対派はただ卒業式を普通に挙行すればよく、この件で日教組と決定的に対峙する覚悟はなかった。それぞれの低カロリーな熱量のせいもあって、職員会議での話し合いは無駄にだらだらと続いた。
業を煮やした相川の心にまたあの閃きが訪れた。
相川は、①日の丸掲揚 ②君が代斉唱 ③卒業証書壇上授与を守るべき最低ラインとし、膠着状態の活路をPTAへのアンケート調査に求めた。
義務教育の卒業式としてこの地域だけ異常な形態の式典を容認するか否か、答えは明白だった。
むしろ教員組合がそんな大それたことを画策していたのかという逆ブレに近い宣伝効果があった。地元の心ある保護者たちが一斉に不自然な卒業式に抗議を始めたのだ。
大喜びしたのは管理職たちだけではなかった。毎年、組合闘争の象徴のように各校で繰り広げられる卒業式問題を苦慮していた区教委の目にいち事務職員の存在がクローズアップされたのだ。
表立った動きはなかったが、校長のもとには区教委から再三問い合わせがあり、どうやら次期人事で相川を区役所に抜擢異動させる雰囲気だった。
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