「異動祝いだ」
英介はびっくりしたが何だか落ち込んでいる自分を励まし元気を取り戻せという三田の優しさを感じながら笑いが止まらなかった。
その日の夕方、台所で晩ご飯の支度をしている真奈美がいた。
「ただいまー」
明るい声で公男が帰宅した。
「どうしたの、いつもよりも帰る時間早くない」
「真奈美ちゃん、俺、昇進したんだ。いきなりの発令だったんだけどね」
「そうなの。おめでとう。じゃあ英介さんとどんどん協力しあって頑張ってね」
「……それが……違うんだ」
「えっ、何が違うの……」
「実は今回の異動というのは英介さんと瞳が結婚したことにおいて俺と英介さんが親子関係になってしまっただろう、ということでうちの会社が今回のプロジェクトに影響しないよう菱井ホールディングスさんに気を遣い俺を企画促進グループから販売促進グループの店舗統括課長に指名してきたということなんだ。
昇進というのはある意味今回のプロジェクトマネージャーである英介さんの義理の父親ということもあると思う。英介さんには頭が上がらないよ。本当に感謝しなくちゃいけないね」
「……瞳ちゃんお帰り……」
公男の後ろに瞳が立っていた。
「パパ昇進おめでとう……英君も何かあったのかなぁ……電話しているのになかなか連絡がとれないの。何もなければいいんだけどね」