外出した後、瞳は英介の腕にギュッとしがみつき申し訳なさそうな表情でお願いした。

それからして、英介は会社の最寄り駅で降りオフィスが立ち並ぶ大通りの歩道をいつも通り歩いていた。すると、後ろからいきなり腕組みされた。それは同期の三田だった。

「英介おはよう。結婚と聞いていきなり過ぎてビックリしたぞ。俺はやっぱり美咲ちゃんとかと思っちゃったけどあの時話していたあの子なんだなぁ」

「もう同居してるよ。ご両親ともにね」

英介はまたまた驚かせるように三田を見た。

「えっ、マジで……そうなんだ! 本当に全てがいきなりだな」

「まぁ後でゆっくり話すけど、彼女のお父さんが取引先であるAKABUNEの早川係長なんだよ。専務にはすでに話をしてる……」

三田は驚き過ぎて一瞬時が止まったかのようにその場に立ちすくんでしまった。

会社の一階フロアに入ると、受付の女性社員二人が英介に笑顔で「おはようございます」と挨拶をした。その直後、小声で「ご結婚おめでとうございます」と言うと、周りの社員たちもそれを聞きつけたのか、次々と挨拶とともに祝福の言葉をかけた。

英介というと他の社員たちには仕事一本で独身を貫く男性に見られてきただけに、五〇歳手前で電撃婚、それも二十四歳年下の女性と結婚をするとは自身でさえ少しも思ってもいなかっただけにかなり恥ずかしい気分だった。

オフィスに到着した英介は机にカバンを置いた。その瞬間、常務の青山が近づいてきた。

「おはようございます常務」

「おはよう風間。少しだけいいか」

青山は英介を自分のオフィスルームへ連れて行った。

青山は自身の席に着くと、両ひじを机に置き両手を組み、そこにあごを置いて、英介を見て話し出した。