話を元にもどして。

美容院をやっていていやなのは、食事にかみの毛が混じる事。店からもどって来る時は、母も祖母も、見習いのお姉さんたちも、念入りにはらい落としてくるのだが、どうしても混じる。

細かい毛ならまだしも、と言っても、これも口の中で確認するといい気分ではないが、時にはものすごく長いかみの毛がツルーと口から出てくる。

そういう時は、指でつまんで、チュウインガムのように、口から引き出すのだが、自分でも思った以上に、長くて、太くて、黒いのが出てくる。そうやって出して見せると、慣れているはずの母も祖母もお姉さんたちも、イヤーな顔をする。

でも慣れているから、ちらっと見るだけで、そのまま食事を続ける。職業がらというやつ。

でも一度そうやって出して見せたら、あるお姉さんが、おはしをピシッとテーブルに置いて、

「マコちゃん、そういうことやめなさい!」と真けんにおこったので、その時以来、そういういやがらせはしないことにした。

美容院は、食べ物で損をするばかりではない。一番のみ力は、お嫁さんの引き出物にありつくことができることだ。

うちも美容院だから(知らない人はいないと思うけれど「スミレ美容院」という)、お嫁さんを作る。

作るというのは、頭を結って、着物を着せて、お嫁さんのあいさつに付き合って、一日お世話をすることだ。頭を結うというのは、高島田を結うということ。時々地毛で結う人もいる。今はかつらの人もいる。

 

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