拘(こだわ)る

少し話が逸(そ)れたが、「なんで60点でいいの?」の後に、私は少し時間をもらって決まった話をしている。

私はパナソニックで多様な経歴をもっていて、様々な仕事に携わった。その中でも経験が最も長いのが商品企画という仕事。

二〇〇六年から六年間VIErAブランドの薄型テレビの日本国内向け商品企画を担当し、責任者としても従事した。

その後、主に海外市場向けのブルーレイレコーダーやプレイヤーの商品企画責任者を四年間、そしてマレーシアでは世界百二十カ国向けのエアコンの商品企画責任者を歴任してきた。

学生にわかり易くテレビを例に出す。例えばあなたが液晶テレビを買いにヤ〇ダ電機に足を運んだとする。

テレビ売り場に到着してまず思うことはなんであろう? きっと「どのテレビも同じ。サイズや価格は違うけど、どれも総じて同じ」。恐らくそう思うであろう。それが現実だから。

でも、それでは商品企画責任者の私の仕事は成り立たない。だから、もしも私が当社テレビを売り込む店員として店頭に立たせていただいたならば、「いやいや、お客さん、当社のテレビが一番映りがキレイなんです。こんなにコントラストが際立っていて、立体感のある画質なんです」という。

でも、お客さんからは「シャープのテレビもキレイだと思いますよ」とツカミがとれない。それにもめげず、私は更に訴求する。

「いやいや、お客さん、当社のテレビはインターネットに繋がって、VOD(オンデマンド動画)アプリも使えるし、ハードディスクも外付けできるなど、便利な機能が満載なんです」と食い下がる。

でも、お客さんからは「東芝のテレビにもソニーのテレビにも同じような機能ありますよね」と撃沈される。これが競争市場の実態であり、それだけ差別化が難しい市場を相手に仕事をしていた。

しかし、それでは私の仕事が成り立たないので、極端な話、私の仕事はあなたがテレビを買いたいと思ったら、あなたが、「よし、パナソニックのテレビを買いにヤ〇ダ電機に行こう!」、そう思って頂ける商品を企画することがミッションだったということ。ゆえに、私は自分が企画立案する商品には徹底的に拘っていた。

 

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