プロローグ
新型コロナウイルスの感染拡大で、二〇二〇年から就職活動事情は大きく変わった。
私が就活生だった一九九三年頃はスーツに身をまとい、数々の企業説明会に足を運んで情報収集に明け暮れ、夏場は額の汗をぬぐいながら、体中汗だくになりながら企業回り。
インターネットもなく、企業を調べる手段は、企業に申し込んで送付してもらったパンフレットや七センチ厚くらいの分厚い『会社四季報』。
今のようなカラフルに図解付きで、業界別にキレイにまとめられた『会社四季報』ではなく、辞書のような文字だらけの情報誌から、意中の企業の規模、業績、初任給、福利厚生などを中心に調べあげ、ノートに書き写しながら、申し込み先の優先順位を定めていっていた。
企業へのインターンは、当時はまだ主流ではなかったが、数週間企業に入り込んで社会人先輩達のわけのわからない言葉が飛び交う現場で「会社ってこういうところなんだぁ~」と刺激を受けながら企業のイメージを掴み、そして自分が働きたい場所や将来やりたいことのイメージに落とし込んでいっていた。
大学の就職課に足しげく通い、大学が提供している名簿の中から、意中の企業に勤める社会人になった大学の先輩達の連絡先を調べあげ、片っ端から電話をかけて、企業のこと、就職活動の乗り切り方について熱心に聞きまわりながら、自身の自己PRや志望動機を固めていっていた。