【前回の記事を読む】「完ぺきな鳥人間になれた気がした」誰にも見つからぬよう東京の夜空へ飛び立った――
私が空を飛ぶ理由~つばめのつばさ~
めざせ、東京タワー
渋谷駅周辺は空が開けているので、さすがに明るい地上からでも見つかりやすい。気持ち高度を上げて、ホテルの入っていそうなビル群からも距離を取る。夜中でも灯りの点いている部屋はある。窓の外を人間が飛んだら大騒ぎになってしまうだろう。こちらもカーテン越しに中を覗き込むような野暮なことはしない。
渋谷駅は眠っていた。駅前から続くセンター街には、飲み過ぎて終電を逃した人がたむろしている。初めて東京に来たときと変わらない光景だ。
帰りに時間があれば駅前の高層ビルの屋上に寄ってみよう。渋谷という立地は、都心を見渡すのに適していると思う。
駅を過ぎると皇居へと続く国道二四六号線ではなく、まっすぐ六本木方面に進む。ビルの間に東京タワーが見え隠れしてきた。六本木ヒルズを右に見ながら少しスピードを落とす。高速道路を離れて飯倉方面に向かうのが近道のようだ。六本木交差点の五差路から、ひと気のない喫茶アマンドのピンクをカーブしてメインストリートに入る。
大学生になって東京デビューしたころは、怖くて六本木など来られなかった。都会を知らない自分には、渋谷や新宿の昼から夜へと肩を慣らした上で、ようやく辿り着ける場所だった。六本木の先には、さらにハードルの高い夜の銀座が待っている。
飯倉を抜けると東京タワーの雄姿がそそり立って見えた。周囲のビルとは明らかに高さがちがう。未踏の高さまで上昇しないといけない。ここまでうまく風に乗って腕の疲れはさほど感じていないけれど、一旦休憩としよう。