【前回の記事を読む】初めての点呼で身構えていた。(失敗はできない。落ち着け、落ち着け……)「はい!」と大声で返事し、起立したその時……
第1章
かつて小学校で同じクラスであった聡子は3組、幸三は8組と教室も離れ、話す機会はめっきり減っていった。小学校時代の友だち関係もいつのまにか薄れていった。
中学校では文部省、教育委員会の方針で、何かしらのクラブに所属することが推奨されていた。
学業だけでは得られない体験や、ストレス解消やコミュニケーション能力、協調性の向上を図るという狙いがあり、特別な理由がなければ、1週間以内に担任へ入部希望を届けなければならず、申込用紙が配布されていた。
美術部や放送部、音楽部、新聞部、理科部といった文化系から、陸上部、サッカー部、バスケット部、テニス部、野球部など運動系クラブまで多くの選択肢があった。
走るのが好きな幸三は迷わずサッカー部を選んだ。サッカーは11人でチームを組み、相手とボールを蹴り合い、手を使わず、足と頭を使いゴールポストにボールを押し込むスポーツで、6人しかいなかった村の小学校では、見たことのない競技で幸三にはまったく未知の世界だった。
ルールはまったく分からないが、入部して覚えればなんとかなるだろうと、楽観的に考えていた。
入学して、数日が経ち、母美弥にサッカー部に入部すると告げた。部員は、25名で、3年生9人、2年生8名、そして新入生が8名。
1年生の中に、高岡貢という生徒がいた。彼は、中学1年生にしては身長が高く、165センチほど。面長で、目鼻立ちが整っているが、どこか険のある表情で神経質な印象を与えていた。
高岡の家は、中学校から2キロくらい離れた町の外にあり、楢林などの落葉紅葉樹林に囲まれた一帯で、秋になると紅葉が見事で紅葉狩りでにぎわうらしい。