【前回の記事を読む】「何もかもが地元とは違う」…幼馴染は小麦色だったのに、クラスメイトの肌は透き通るように白く、血管まで見えるほど…
第1章
幸三はいつ、自分の名前が呼ばれるか――緊張のあまり心臓の高鳴る鼓動を自覚し不安な気持ちを抑えきれなかった。
教室内の生徒たちは、次々と、名前を呼ばれ、呼ばれた者は落ち着いた様子で椅子から立ち上がり、大きな声で「はいっ!」と元気よく返事をしていた。
幸三は、「これは、しくじる事ができない」と肝を据えて、「落ち着け、落ち着け」と心の中で念じながら、いつ呼ばれてもよいように身構えていた。
あ行から始まった点呼が、は行にさしかかったとき、「平岡幸三くん」と呼ばれた幸三は、「はい!」と短く大声で返事し、勢いよく立ち上がった。
その拍子に、バランスを崩し、後ろへひっくり返ってしまった。
頭を打ちつけ「いてえー」とあえぎ声を上げると、隣の席からくすくす、と控えめな笑い声が聞こえる。
顔を上げると、大きく澄んだ瞳をした色白の女子生徒がやや小柄な体つきを傾けて、じっと幸三を覗き込んでいた。
それが、美智子との初めての出会いだった。
自己紹介を兼ねた点呼のあとは、担任から学校の大まかな行事予定や授業、時間割の説明、そして学級当番の割り当についての話があった。
先ほどの転倒で背中は痛いが我慢して、幸三は一言も聞き漏らさないように、必死で耳を傾けていた。
すると先生が「学級委員長は、男子は……、そうだな……」と間を置きながら名簿を繰り少し間合があり、「男子は、平岡幸三君。女子は加藤美智子さんにお願いします」と発表した。
突然、学級委員長に指名された幸三は眩暈がするほど驚き、頭がくらくらしてきた。
後になって分かったことだが、これまでの引き継ぎで、「分校と町の生徒から学級委員長を選出する」という取り決めがあり、分校からの連絡簿には、幸三の名が推挙されていたらしい。
他の委員は、2〜4名ずつの構成で生活委員、図書委員、体育委員、放送委員、花壇委員、飼育委員、給食委員などがあり、クラスの運営に全員が関われるように、何かしらの委員が割り当てられていた。