彼女は町にいくつかある建設会社の一人娘で、小学生の頃から体が弱く、体調が悪いときは学校を休みがちだったという。
幸三は、持ち前の優しさから、「頼ってくれるのなら、自分が美智子を支える役目を果たそう」と、ひそかに心に決めた。
幸三は毎朝、登校するとすぐに美智子と一緒に職員室に行き、担任の大江から連絡帳を手渡されると、今日1日の行事や連絡事項を急いで書き込み、そのまま教室に戻って朝の学級連絡会の準備をするのが日課だった。
学校は朝8時30分から始まり、学級連絡会が9時まで。
各委員からの報告と提案、学校側からの連絡事項などを申し送りし、各委員の意見を調整するあいだ、担任は自分の机で話の流れを聞きながら、連絡会の進行を確認し記録を取っていた。
授業は朝9時から始まり、午後2時50分に終了する。昼食は学級給食があり12時10分から1時までにとるため、小学校と違い、持っていく弁当は要らなかった。
給食は日替わりで給食委員が、机ごとに温かい食事を配る。幸三にとっては、学校での唯一、ホッとできる、楽しみな時間でもあった。
授業は午前中に3科目、午後に2科目が組まれている。幸三にとって最大の苦痛は、先生が、教室に入ってきた時と、授業が終わった時に大声で「起立!」「着席!」の号令をかけることだった。
合図のタイミングと間合いが難しく、少しでもずれると厄介だ。授業が終わる頃になると、その緊張で心臓の鼓動が高まり、教科書の文字などまるで頭に入らなかった。
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