【前回の記事を読む】およそ30年、人生を共に歩んできた相手とは「不倫」の関係だった。二人は人生の終盤となり、老いを迎え…
1 出会いと恋の始まり
恋のはじまり
その後、四か月ほどして、照将さんから「東京の美術館を案内するから時間を作ってください」と誘いを受けました。「夫や子どものある私に?」と疑問や一抹の不安がありましたが、まじめな方だと信じ、田舎育ちの私は、東京へ行ける嬉しさから承諾しました。
そしてある春の日、浜離宮や根津美術館など都内を案内してくれました。紳士的にエスコートしてくれ、絵画鑑賞、東京の風景を楽しみました。桜の季節でした。
夕暮れ時、当時あった羽田空港近くのホテルで食事をしました。私は、来年には今の部署から異動することになるだろうと伝えました。
よい思い出ができたこと、ありがたいと感謝していることを伝えました。食事後、ホテルの庭を二人で歩きました。その時に、初めての口づけと抱擁をしました。力いっぱい抱きしめられての熱い口づけでした。
突然のことに、私は驚きどうしてよいのかわからず、取り乱してしまいました。照将さんは、私に、帰りが遅くなったことを詫び、優しく東京駅まで送ってくれ、二人はそれぞれの家に帰りました。
その後は、今までどおりの日常に戻り、私は、子育てと仕事で、毎日追われるような日を過ごしていました。照将さんとは、何事もなかったかのように、議員と秘書の仕事上での付き合いでした。
私は、あの時のことは照将さんの一時的な気持ちの迷いだったのだろうと思い、そのまま忘れることにしました。
そして東京に出かけてから半年あまりが過ぎた頃、照将さんからまた東京で会いませんかとお誘いがありました。今頃になってまた会おうとは、どういう気持ちなのだろうかと戸惑いました。
仕事上のこともあるので、無下にすることもできないと、あれこれ考えました。騙されたりしていないかと思ったり、照将さんに近づく怖さもありました。