しかし、私は、初めて二人だけで会ったあの春の日に、照将さんから「議員は特別な人ではない。議員なんて、やくざな商売だ。自分の子どもにはさせない。自分は、特別扱いは受けない」との言葉が、ずっと心に残っていました。
特別扱いを受けることを望む人たちの中で、ご自分を律している立派な方だと好感を持ったのでした。信じられる人だと思いました、照将さんが人格者に見え素敵な人だと感じていたのです。
私は、照将さんにもう一度会って、照将さんの人となりを確かめよう、なぜ私に会いたいのか聴いてみようと思い、お誘いを受けることにしました。
その日は師走の寒い日で、私たち二人が住んでいる地域にとって、およそ十年をかけて完成した大プロジェクトのお披露目の日でした。照将さんは式典に出席した後、待ち合わせの場所に先に来て待っていてくれました。
私たちはお茶を飲み、食事をし、歩きました。照将さんが、その日あったプロジェクトの式典のことを話してくれました。私は照将さんに、なぜ声をかけてきたのか尋ねました。
照将さんは、私がひとり朝早くに出勤し、影日向なく働く姿を見て、心惹かれたと言いました。そして、この半年間、私のことを調べて、信じられる人だと思ったとも。
私は、照将さんが私の仕事ぶりを見ていたことに驚き、何より嬉しく思いました。そして、半年間私をなんのために調べたのだろうという怖さも感じながら、そこまで私を気にかけてくれたことが嬉しかったのでした。
いつの間にか、かなりの時間が経ち、外は暗くなっていました。私たちは暫く歩きました。東京は街灯や照明が多いといってもやはり暗闇です。
人ごみの中、私は、照将さんを見失わないように必死について歩きました。照将さんは、人通りの少ない暗い場所で私を強く抱きしめ、そして愛していると言いました。
私は、不安や怖さがないわけではないけれど、今私を求めているこの人の気持ちを大切にしようと決めました。励ます会で親しく話すようになってから一年が経っていました。