コミュ障は「聞く耳持たず」

あげくのはてに一人の優秀な研究者が自死にいたるという悲劇的な結末を生んだのは、周知のことだろう。

くり返し書くが、こうした「大発見!」と思ったものの、よくよく調べたら誤認でしたというのは、科学研究の世界では日常茶飯事なのだ。

それを今回のように大騒ぎにしたのは、最初の発見者たる女性が(1)人並はずれて思い込みが強かったこと、そして(2)自分の成果を超一流学術誌に載せたいという一種のブランド志向が強かったこと、なおかつ世界中から注目されたいという願望に周囲もついつい同調してしまったことに起因する。

それでなかったら、割烹着を着て、ムーミンの絵の描かれたフリーザーを、たとえ本当に本人の好みであったのだとしても、マスコミに公開したりするはずがないだろう。

それこそ私の考える、コミュ障の人の、典型的な心理なのである。

STAP細胞の騒動を引き起こした彼女と、現代のベートーベンたる彼についての、世の中の反応のトーンには、かなりの隔たりがあると感じたのは私だけではないだろう。端的に同じように周囲を欺いたのであったとしても、前者を擁護する人は後者より圧倒的に多かった。それは前者の彼女に、悪意の香りをかぎとることがなかなかむずかしかったからではないだろうか。

彼女には、周囲を意図して騙すつもりがなかったであろうという私の推測はすでに書いた。その代わりといっては何だが、彼女は、自分を欺くことに長けていたのだと私は思う。

自分を欺くとはどういうことかというと、いったん「こう」と思い込むと、その信念に矛盾する情報が入り込むことを一切、意識してシャットアウトしようとするわけではなくて、無意識にそうしていることを意味する。

無自覚に行うがゆえに、悪意はにおってこない。うさんくささがないゆえに、今回の騒動でも、周囲はすっかり彼女の報告を信じ込んだ。なまじ悪意のない、自分を欺くタイプの人間のほうが周囲におよぼす被害は甚大であることがおわかりいただけるだろう。

これと信じたら、それに都合のよい情報だけが認識され、目標にひたむきに邁進する。周囲が何をいっても、まったく馬の耳に念仏。その上、自分が「正しい」と思うことをこちらに、グイグイ押しつけてくる。断ると怒る。かくしてコミュ障の人はトラブルメーカーにまつり上げられるのだ。

古くからいわれている「聞く耳持たず」とは、ある意味コミュ障の人の本質を突いた表現といっても過言ではないだろう。正確には、自分の信じることに矛盾する内容について、「聞く耳を持たない」ということになる。

次回更新は6月16日(火)、7時の予定です。

 

👉『コミュ障 動物性を失った人類 』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「抱き締めてキスしたい」から「キスして」になった。利用者とスタッフ、受け流していると彼は後ろからそっと私の頭を撫で…

【注目記事】生徒を下校させた後、すぐにラブホテルへ…まだ2回目の彼に、早く触れて欲しい。2人で歯磨きした後、優しくキスされて…

 

ゴールドライフオンラインは、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp