服と下着が乾いたが、耀子がこの雨の中を出て行くのは嫌だと言い出した。

「お願い、あなた、すみません。ご迷惑かけませんから」

薔子に言う彼女を、迷惑はもう充分かけている、と市村はいまいましそうに促した。

「ね、」と耀子は今一度救いを求めるように薔子を仰ぎ見た。夜の豪雨のほかに、彼女を怖がらせるものがあるようだ。

「……ええ。お布団、敷いてさしあげましょう」

薔子は溜息の出るような気持で言い、その決心を示すようにリビングを出た。

そのまま居れば、市村としては耀子を再度促さざるをえまいし、薔子もそこまで露骨に迷惑顔もできなかった。この雨を考えれば、ここで追い出しては親切にはならないだろう。

薔子が奥の日本間に床をのべていると、市村がやって来て、追い出して下すってよかったのです、と言った。

「この雨の中を、片目では危ないですわ」

薔子は、彼の車のヘッドライトが一つ割れていることを言った。市村もそのことは考えるらしかった。

「あの、同じお部屋でよろしいのでしょうか?」

一組の布団を敷き終って、当惑げに薔子は尋ねた。

「僕ですか!? いや、僕の分はいりません。あっちのソファーを貸して下さい」

本人がそう言うのだから、それ以上のことはしてやらない方が気重にならないだろうと、耀子を日本間に案内し、リビングの市村に枕と毛布を出してやると、薔子も顔を洗って寝室に引き取った。

彼らのために、廊下のフットライトと、リビングの一隅のスタンドはつけたままにしておいた。