「どこに向かうの?」

明里さんは入念に日焼け止めを塗りたくっている。

「遥香の家にまっすぐ行ってみようかと思ってる」

「そうなんだ! いいね」

「ここから少し歩くから、タクシー拾おうか」

僕の提案に、明里さんは頭を横にぶんぶんと振る。旅は歩いてこそ旅になるらしい。よくわからない理論だし、旅だと思っているのは彼女だけだ。

そんな明里さんに、日焼け止めの効果はすぐに出るものではないから、陽に当たる二十分から三十分前につけないと意味がないのだと教えてやると、驚いた声を上げ、すぐにタクシーに乗ろうと言い出した。

田舎の割に、タクシーは意外とすぐに捕まった。冷房の効いた車内で、明里さんは快適そうにしているが、僕にとってはそれどころではない。これから訪れる現実を想像し、タクシーが速度を上げて目的地に近づくほど、心臓が大きな音を立てて脈打つ。妙な吐き気も覚えてきた。

早く着いてくれという気持ちとまだ着かないでくれという気持ちが入り交じる変な感じがする。

次回更新は6月9日(火)、11時の予定です。

 

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