【前回の記事を読む】清潔すぎる生活が免疫を弱らせる? 生存の危機がないと人は老いる。だが「体に良いこと」ばかりする現代人は……

序 哲学的観点とホルミシス効果

ニーチェの考え方

ニーチェ(Friedrich Nietzsche)の著作『偶像の黄昏』にWas mich nicht umbringt, macht mich stärker.(What doesn’t kill us only makes us stronger. 我々を滅ぼさないものは我々を強くしてくれる)というのがある。

What doesn’t kill usは『サバイバルボディー』の原題になっているものだが、ニーチェのこの一文は

「苦難と挑戦に直面したときに、逃げずにそれを乗り越えようとすることでわれわれは逆境に打ち勝つための強さを獲得することができる」という意味で、

この表現は、後に多くの人々によって引用され、一般的に広く知られるようになったようだ。

ニーチェは他のところでさらに次のように明瞭に述べている。

「高く誇らしく伸びようとする一本の木は荒天や嵐なしに済ますことができない。

また、外部から襲う不利な条件や障害など、またある種の憎悪・嫉妬・強情・不信・冷酷・貪欲・暴力などは、好都合な環境の成分である。

なぜならこれらなしには徳における大いなる成長そのものがほとんど不可能になるからである。

虚弱な本性の人間を破滅させる毒物は、強い人間には強壮剤となるのだ、強者はそれを毒とよぶことすらしない」(『悦ばしき知識』十九節)