【前回記事を読む】朝、ちゅーるとおやつを嫌々食べていたネコ…その後、嘔吐。「食べられないのには理由がある」ことは分かっているのに…
悲しみの底で見つけたもの~猫さんが生きた八十九日間の記録
三月十九日(水)
病院で帰り際に、食欲増進剤カプロモレリンの処方をしてもらった。最初提案を受けた時は無理だと思ったが。一日一回なら継続できると判断したからだ。
これまでの塗り薬のミルタザピンに限界と効果の無さを感じていた。耳は薬疹でただれ、あちこち水疱ができて破れていた。見ていて気の毒だった。痛々しい耳と引き換えに食欲が出たのなら、まだ頑張ってもらおうと思えるが、最近の食事状況は惨憺たるものだった。このままでは餓死してしまう。
腫瘍が体を食い尽くさないうちに、飢えて死なせたくない。
そこで、ミルタザピンの代わりにカプロモレリンに期待をかけたのだ。それにこの二種類の薬は作用機序が異なるので、併用しても問題ないとの事だった。つまり、耳が回復して、カプロモレリンの効果が不十分だった時には切り札としてこの方策が使える。治療オプションが増えた事を実感してまだ頑張れるような気がした。
猫さんを家に送って、すぐに幼稚園に向かった。終業式の終わりには間に合い、記念撮影に参加でき、さらに担任の先生と話ができた。息子が大きく変わりました、ありがとうございます。いえいえ、私も楽しかったですよ。ここ最近の私を包む不安、落胆、絶望を吹き払ってくれるような時間だった。
もしかして、これも猫さんが起こしてきた奇跡の一つなのかも、と思う。何しろ彼女は「スピリチュアルな猫」なのだから。
帰宅して夕方、カプロモレリンを飲ませる事にした。今度は液体の飲み薬だ。ボトルにチャイルドロックがかかっていて、説明書通りにやっても、どんなに力を入れても開かない。どうやら故障のようだ。このところすっかり短気になってしまった私は、ペンチで蓋を破壊して薬を取り出した。高所に置けば済むのに、このややこしい機構のせいで、三十分も時間を浪費した。
飲ませた猫さんの口からブクブクと蟹のように泡が出てきたのでびっくりした。ティッシュで拭っても拭っても口から洩れてきた。止まるまでにたっぷり二分はかかったと思う。
効果は覿面だった。おやつやちゅーるの食べっぷりが良くなり、これまで無駄と分かっていても出しては捨てていたカリカリご飯までも食べてくれた。同時に出してあったウェット療法食は素通りしたが。
この日の栄養は110キロカロリー。水分は飲水210mlに点滴120mlの合計330ml。体重は4・48キログラム。体重は減っていたが、カプロモレリンの効果で今後の期待が持てそうだった。