近江舞子の松林には、戦争中に松根油を採った跡みたいに斜に筋が入って脂の出たものもあった。だが戦時中のものが残っているわけはない。新しくつけられた傷なのだろう。

松根油は私の小学生の頃近所に工場があって見物しに行っていた。全く物がない時代で冷却管は竹筒であった。

そんな装置で松根油を蒸留して航空燃料を作ろうとしていたのだ。冷静に考えれば、もうそれ丈で戦争の続行は不可能と分かったに違いない。

ただ比良から近江舞子北小松のあたりは松林に白い砂浜が続いて水もきれいで、琵琶湖の水辺のレジャーの聖地になりつつあるようだ。ボートや水上バイクの基地が思ったより多くみられる。又湖岸の建物も別荘らしきものや保養所らしきもののほとんどが驚くほど立派なものである。

そしてこの寒さというのに大阪や京都の車が駐まっている。要するに出掛けて来ているのだ。夏のレジャーだけでなく、冬でも湖畔に来るだけで安らぐのだろうか。

琵琶湖は夏も冬もいいところの様だ。琵琶湖の西岸は大体山が迫って来て平地が少ない。その分、山からの土砂は直接湖に注ぎ砂浜ができる。琵琶湖の東岸はその逆で葦の生える湖岸が続いている。

目的地の北小松の駅前は大掛かりな湖西バイパスの工事中で巨大な橋脚部だけが真ん前にデンデンと並んでいる。丁度北小松駅の駅前広場あたりにだ。

でもその前にある暖かそうな喫茶店を見付けた。私は転がり込むように入りコーヒーをたのんだ。

電車の時刻迄時間があったので私は今回の企てなどをカウンターの奥のおばさんに話したりした。しかしあまり興味は無いようだった。

とにかく寒い中を歩いて後一息吐けてほっとした。これで8日目にしてやっと大津市が終わり次は高島市に入る。