「おめでとうございます、ルシフェル様」

ルシフェルは言葉の意味が理解できず、怪訝そうにソフィアを見た。

「うあっ! うっ、うぉ~!」

ルシフェルの身体が赤く染まり始め、目がギラギラと輝いた。

「どうしたのだ? 身体が熱い! なぜか怒りが込みあげる。私はどうなっているのだ? この震えは何なんだ?」 

今まで感じたことのない力がルシフェルの全身にみなぎっていた。しかし、その力をどうすることもできず、うめき声をあげながら椅子や机など、目に映るものを手当たりしだいに壊した。怒りがルシフェルを支配していた。怒りはソフィアにも向けられ、ルシフェルは手を振り上げたがソフィアはそれを優しく受け止め、ルシフェルを抱き寄せた。

「これが、これこそが本来のルシフェル様の力。この地球を治める者の力でございます」

ルシフェルの身体は変化し続けた。全身の筋肉が隆起し、別の者と化していった。

「確かに! この湧き出る力は懐かしい感覚でもある。弟ミカエルと剣を交えた時に感じていたものと同じだ! いや、それ以上だ!」

ソフィアはルシフェルのぶ厚い胸板に顔を当てて言った。

「その力をもっと欲してくださいませ。欲すれば欲するだけ傲慢で圧倒的な力を得られます」

ソフィアの目は赤く染まり、不気味な笑みと共に美貌が崩れて魔物のような醜い姿になっていた。ソフィアはルシフェルをさらに奮い立たせ、薄暗い部屋の片隅を指差した。

ルシフェルが息を荒げながら近づくと、そこには無数の女神の屍が折り重なるようにして積み上げられていた。無残にも切り裂かれて命を落とした者たちが強烈な異臭を放ち、その上を無数の蠅が羽音をたてながら飛び交っていた。

ルシフェルは躊躇することなく屍の山に飛び込み、手当たりしだいにむさぼり喰らい始めた。まるで宴のメイン料理を楽しむかのように肉を頬張り、血をすすった。屍はみるみる食いつくされ、衣服と髪や骨だけが残った。そして、ルシフェルの狂気の目がベッドに横たわっているソフィアに向けられた。