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十一月三日、明治節の日に市内中等学校の文化祭が行われた。みんなが楽しみにしていた文化祭だったが、戦争が厳しくなって今年は中止することが夏休み明けに決まった。それが、急に変更になり、そのことで佐々木先生は校長室に呼ばれた。
「佐々木先生、市内中等学校文化祭は中止する話でしたが、やることに変わりました」
「ほぉ、そうですか」
「文系学生の徴兵猶予が停止されたことは君も承知していると思いますが、そうなると勉学への意欲が低下しかねない。そうした中で文化祭も中止となると、いっそう文系の勉強が疎かになると心配した人が現れた。それで急に文化祭は復活するということです」
「はぁ、そうですか」
「例年どおり音楽会もコンクール形式でやりますが、急な変更だから音楽に見識のある人を呼ぶことができない。それで市長と学務課長と三菱造船の副所長が審査員をやるそうです。つまり素人が賞を決める」
「……」
「それから演奏曲は各校三曲、その中には軍歌を加えることが条件です」
「……」
「それで、君を呼んだのは、この条件で本校の合唱部が音楽会に参加するかを聞くためです」
「出なくても構わないのでしょうか?」
「もちろん構いません。活水女学校は準備が整わないから、と参加を辞退しましたよ」
「でも、辞退したら本校の立場が悪くなるのではないでしょうか?」
めったに表情を出さない先生が、珍しく心配そうな顔をする。
「そんなことはないでしょう、あくまでも任意の参加ですから」
「そうですか……。では参加させていただきます」
「……そう、参加するの?」
「はい、どんな演奏会であれ、演奏の場があれば生徒たちが喜びますから」
「そう。では参加の旨、答えておきますよ」
「よろしくお願いいたします」
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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