2020年代のコロナ禍以降、物流業界ではトラックドライバー不足が深刻化すると考えられていた。その対策として、隊列走行型トラックや無人運転トラックの本格導入が進められた。

それを強力にプッシュしたのがジャイラの前身となる組織「AI物流を実現する会」だ。

世界銀行が発表した貿易・ロジスティクスの競争力を示す「物流パフォーマンス指数(LPI)」において、日本は2000年代後半から徐々にそのランキングを落としていた。コロナとは別に、未曾有の少子高齢化問題を抱えている日本には物流業界の労働力不足も大きく影響する。それを見越しての大改革に打って出たのである。

しかし、物流を完全に自動運転に託すためには、大きな技術的な課題があった。それはAIの判断ミスをなくすことである。

人と車両の距離などを見極め、優れた人間の判断に匹敵するレベルで加速・減速・停車などの正確な判断力が必要になる。そのためにはカメラやセンサーなどから得た道路状況に関わる莫大なデータをスピーディーに処理していかなければならなかった。実際、自動運転が増えれば増えるほど、クラウドの負担が増えていくことになる。

それを解決したのがエッジコンピューティング(端末の近くに計算・情報保存などの処理装置を配置するネットワーク技法)の普及と量子コンピュータの実用化である。

量子コンピュータの進歩とその最適化手法である量子アニーリング(組み合わせ最適化問題を解くことを主な目的として開発された、量子力学を用いた計算手法の一種)の発達により、空飛ぶクルマなどのエアモビリティも実現した。そしてさらに時代は超量子コンピュータに向かおうとしている。

こうした技術的な背景の後押しもあり、AIによる物流センター運営は現実味を帯びていった。「AI物流を実現する会」は、その名前からわかる通り、前時代的な政治色の強さを表でも裏でも発揮し、物流業界の中心的存在となっていく。

活動の過程でより強固な太いパイプを経済界に築くことに成功し、AI省の立ち上げに関わりながらジャイラを発足させたが、なんといっても最大の功績は「ロジマザー」を誕生させたことである。

そんな技術の粋を集めた最新鋭の物流施設「ロジマザー」を直接見られる機会というのは、璃子にとってもめったにないチャンスである。しかし、ジャイラは野心的で一筋縄ではいかない組織だ。

 

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