【前回記事を読む】あの子が「一緒に遊ぼう」と歩み寄ってきた時、一瞬立ち止まり、後ずさりしてしまった。私は障害児差別のことを何も分かってなかった

医学生時代 1979年4月〜1985年3月

小児神経3 全ての人が大切にされる社会とは

自分の思いを表現できない人を理解するには、目に見えない姿に目を向け、耳に聞こえない声に耳を傾けなければいけない。福井さんは、表面的な価値にとらわれることなく、本質的な価値に向き合うことの大切さを説く。どんなに重い障害のある人にも、共通する価値観。それは、人の命を大切にすることと、人の権利や自由を大切にすることだ。

私たちの社会は、一人一人が個人の権利や自由を主張し合い、求め合う社会だ。しかし、福井さんはそんな社会を否定する。全ての人が大切にされる社会とは、そうした社会ではなく、他者の自由や権利を侵さない社会、必死に守り合う社会だと教えてくれた。

学生サークルでのボランティア活動に行き詰まっていた頃、私の心は大きく揺さぶられた。熱しやすく冷めやすい学生時代、6年間継続して障害児と関わり続けることができたのは、福井さんとの出会いがあったからだと思う。

ささやかな額ではあるが、医者になってから毎年、クリスマスに止揚学園への寄付を続けている。

――秋田魁新報 2012年8月7日掲載