【前回の記事を読む】シリンジをまわされた日本人男性…フロリダの自宅アパートに戻ると、不法滞在の仲間が集まっていた。“トライトライ”と…
2. 饗宴
キングサイズのエアーベッドがブルブルと激しく軋み続ける音、その上に四つん這いで誰かに小刻みに後ろから抱かれ突き動かされている女は誰だろう。
耳にかけた黒髪はすぐに滑り落ちてまたかけ直すがあっという間に弾け飛んでそれを諦め、せり出した肩甲骨を雛のように動かしながら前方へ弾かれる体を支える手で、目許に落ちていた紙飛行機を何かの拍子に揉みくちゃに握り潰し上体を折れてしまうくらい反り返らせてかわいい悲鳴を上げると同時に放られたその銀紙の塊は、ついに開け放たれたガラス戸の外に達して闇の奥へと見えなくなった。
リビングテラスの暗がりに赤ん坊をあやして遊ぶハルカの楽しそうな囁き声を見つけた。シーズーは一体どこまで行ってしまったのだろう、空はスコールから慢性的な雨になり、時折そのはるか遠方に稲光とプラズマがまだ見えて、それに少し遅れて起こる落雷の振動が微かに胸の底を打った。
うつ伏せで倒れたままの女の太腿には粒状の汗が無数に浮き出ていてガニ股のまま長い頭髪を前方に広げ轢死体のように痙攣している。その背後で彼女を突き放したモブの友人はなぜ低くうなだれたまま顔を手で覆いシクシク笑うように泣いているのだろう。
明かりの消されたキッチンカウンターでリッキーの二の腕にぐったりともたれながら、メグというヒカルの同輩がもつれた口調で何かの詩を暗唱する。
〝不可分の微細なものたち
高く夏空に立ち上った、とても微細なもの
キラキラとまぶしい、人影を映す木の葉
さえぎるものは何もないと知った朝に
君は何を打ち明けたのか
華やいだ地下街は、すでに私一人