三.虫首(バッタ)
魔女玉の映像は次第に薄れ、元通りに七色に変化し続けている。消滅することなく上下左右にふわふわと移動する様は、次の映像を待ちわびているようにも見える。
「この後はどうなったのです?」
「じいちゃんの家に連れていかれて、そこで暮らすことになったのよ。大邸宅だった」
「あの犯人は?」
「あいつについてはじいちゃんから色々と聞かれたけど、何も言わなかった。カタキをとってやるとも言われたけど、自分でやるとはっきり答えたら、じいちゃんは凄く気に入った様子で肩を抱いてくれたわ」
「虫首はまだ二つ残ってますよ。それを食べたら次のシーンが見えるでしょう。食べてくれます?」
彼女自身も同じ思いのようで、二つ目の虫首を箸でつまんで口に入れた。四角っぽいからバッタだ。するとさっそく新たなシーンが魔女玉に出現した。
「ここはよく覚えているよ。じいちゃんの邸宅にある渡り廊下だ。大きな池の一部がこの下にまで伸びてた。廊下からコイに餌やりができたんだ」
「廊下の屋根の軒下に立派なクモの巣がありますね」
「きっとあのシーンだわ。あれにエサをやるのを楽しみにしていた。大きなバッタを手にしてるわね。でも背が低くて巣には手が届かない。投げれば飛んで逃げるだろうし、殺してから投げるのはつまらない。悩んでるところよ」
「おや、グラマーなミニスカのお姉さんだ」
「じいちゃんの愛人の晶子。じいちゃんは厳格な人だったけど、女性遍歴は激しかったみたい。しかも悪女好み。でも私は、どうにもこいつが嫌いだったわ」
――晶子はすれ違いざまに、イチコの手にしたバッタをさっと奪い取った。
「かわいそうなバッタちゃん。クモなんかに食べられたくないよね」
彼女は意地悪そうな目でイチコを睨んだ。それからバッタの脚を一本一本むしり取り、羽根もむしり取ると、残った胴体をポイッと池に投げ込んでしまった。バッタはあっという間にコイの口の中に消えた。
イチコは露骨に晶子を睨む。
「なんだい。その生意気な顔は。手足を縛ってこの池に投げ込んでやろうか。お前は手も足もないバッタだ。そういえばお前の父さんの死に様もそれだったらしいね」