【前回の記事を読む】がん薬物治療のパラダイムシフト。特定の細胞を選択的に攻撃することが可能に。一部の薬物生成には日本人が関わっていて…

第三章 がん薬物治療の進歩

細胞障害性抗がん薬の時代

シスプラチンに続いて開発されたカルボプラチン、オキサリプラチンなどプラチナ製剤は現在も広く使用されている。

1990年代は、Ⅰ型トポイソメラーゼ阻害剤(註1)のイリノテカン、新しいビンカアルカロイドのビノレルビン、微小管の脱重合を阻害するパクリタキセルとドセタキセル、新しい葉酸代謝拮抗剤のゲムシタビンなど多くの抗がん薬が開発され細胞障害性抗がん薬の黄金期でもあった。

イリノテカンは、わが国のヤクルト本社で開発されたもので、Ⅰ型トポイソメラーゼ阻害剤という新しい作用機序を持った薬剤で、大腸がん、胃がんでは、現在も全世界で使用されている。

プラチナ製剤の一種であるオキサリプラチンも1970年代にわが国で創られた薬剤であるが、臨床試験はヨーロッパで行われて2000年以降にわが国に逆輸入された。

わが国では、テガフール、ティーエスワン、カペシタビンというフルオロウラシルのプロドラッグが1990年~2000年代に開発された。

プロドラッグとは、体内で酵素によって代謝されて初めて有効な薬として効果を発揮するもので、吸収の改善、副作用の軽減、特定臓器への到達性の向上、作用の持続性などを目的に創られた薬剤で、わが国の製薬企業の得意とするところである。

このようにして、1946年のナイトロジェンマスタード以来、半世紀にわたって続いた細胞障害性抗がん薬の時代から、21世紀になって、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤と新しい抗がん薬の時代を迎えることとなった。