そんな状態が2、3年続いた時、所長が急に月渚(るな)を連れて東京でTVに出ると言い始めたんです。私は驚いて開いた口が塞がりませんでした。でも、研究所が有名になったら自分の給料ももっと上がるだろうかとそんな馬鹿なことしか考えていませんでした。

でもTV番組での実験は悉く失敗しました。私は月渚が超能力者だなんて一度も思ったことがなかったので、当然と思っていましたが、東京から帰ってきた時の所長と月渚の落胆ぶりは直視できないほどでした。

所長はそれ以来ひどく機嫌が悪くなり、何か気に入らないことがあると、すぐ私や子供たち、特に月渚に当たり散らすようになりました。長時間、深夜まで月渚を叱責し続けたこともあります。そんな時も月渚はうつむいて唇を噛み締めるだけで一度も涙を零したことはありませんでした。

私はできるだけ月渚に寄り添ってあげようとしましたが、彼女は特に私を必要とはしていなかったように思います。彼女にとって一番の心のよりどころは悠雅だったので。

悠雅は本当に優しくて、月渚のことをいつも心配していました。でも弱虫でいつも月渚と喧嘩して泣かされていました。月渚は小さい頃から男勝りで気が強くて負けず嫌いでしたね。

ああ、でも一度だけ、月渚がべそを掻いて私に泣きついてきたことがあるんですよ。彼女は飛行機事故で亡くなったお母さんが手作りしてくれた女の子の人形を肌身離さず持っていたんです。お母さんの大事な形見ですから。

事故の時に救出された時も手にしっかり握っていたそうです。それが無くなったってわんわん泣くんです。彼女があんなに泣くのを見たのはそれが最初で最後だったと思います。

それで私が一緒に捜したら、駿矢が普段の腹いせに隠していたことが分かったんです。その後、私が知らない所で月渚は駿矢をボコボコにしたみたいですよ。次の日、駿矢は顔中痣だらけで、それ以降月渚に頭が上がらなくなっていましたから」

鍬下は皆実の取り留めのない思い出話を整理しながら聞いていた。

「それで、警察が来た時はどうなったんですか?」

「その時のことは私もあまりよく覚えていないんです。所長が連行されて行って、自分も捕まるんじゃないかと焦っていましたから。もちろん、その後私も逮捕されたんですが、研究所の詳細を把握していたわけではなかったので起訴されずに釈放されました」

次回更新は5月22日(金)、21時の予定です。

 

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