【前回記事を読む】周りから見れば、変かもしれない…アイスを2つ注文し、1つは向かいの席へ。溶けていくのを見ながら、私は話しかけた。

終章 今日も、笑顔で

ある日、私は古いスマートフォンを整理していた。

機種変更して使わなくなったスマートフォン。その中に、母とのLINEのやり取りが残っていた。

「今日はお花がきれいだったよ」

母が送ってくれた写真付きのメッセージ。公園で撮った花の写真。何気ない日常の一コマ。私は画面をスクロールしながら、母とのやり取りを読み返した。

「今日の夕飯は何にする?」

「カレーがいいな」

「了解。じゃあ買い物行ってくるね」

何でもない会話。でも、今となっては、かけがえのない宝物だった。

スタンプのやり取りもあった。母が送ってくれた猫のスタンプ。「えへへ」という吹き出しがついている。私は思わず笑った。

「お母さん、このスタンプ好きだったよね」

画面の中の母は、今も笑っているようだった。

私はそのLINEのやり取りを、すべてスクリーンショットで保存した。そして、母の自叙伝に追加することにした。

本を改訂し、LINEのやり取りのページを加えた。

「母とのLINE――日常の記録」

そのページには、何気ない会話が並んでいた。

買い物のこと、天気のこと、テレビ番組のこと。些細な日常の断片。でも、それが母との最後の数年間の記録だった。

「お母さん、本、また厚くなったよ」

私は仏壇に報告した。

「LINEのやり取りも入れたの。お母さんが送ってくれたスタンプ、全部残してあるよ」

遺影の中の母は、変わらず微笑んでいた。