母の一周忌に、親族が集まった。

伯母、いとこ、その他の親戚たち。久しぶりに顔を合わせる人も多かった。私は完成した本を、一人一人に手渡した。

「これ、お母さんの自叙伝です。読んでください」

伯母は本を受け取り、表紙を見て涙ぐんだ。

「まあ、悦子……きれいな写真ね」

「北海道旅行のときの写真です。お母さん、すごく楽しそうだったんです」

「そう……よかったわね、旅行に連れて行ってあげて」

伯母は本をめくり始めた。ところどころで立ち止まり、思い出を語ってくれた。

「この話、私も覚えてるわ。悦子とよく一緒に遊んだのよ」

「お母さん、伯母さんのこと、よく話してました。仲良しだったって」

「そうなの。子供の頃から、いつも一緒だったわ」

伯母の目から涙がこぼれた。

「悦子がいなくなって、寂しいわ。でも、こうして本にしてくれて、ありがとう。悦子も喜んでると思う」

「私も、そう思いたいです」

一周忌の法要が終わり、参列者が帰った後、私は一人で母の部屋に座っていた。

窓の外では、桜が散り始めていた。母が亡くなったときも、桜が咲いていた。あれから1年。季節は巡り、また桜の季節が来た。

「お母さん、1年経ったよ」

私は仏壇に向かって話しかけた。

「寂しかったけど、何とか頑張ってきたよ。お母さんがいなくても、ちゃんと生きてるよ」

遺影の中の母は、変わらず微笑んでいた。

「本、みんなに喜んでもらえたよ。伯母さんも泣いてた。お母さんのこと、みんな覚えてるよ」

私は目を閉じた。

母の声が聞こえるような気がした。「ありがとう、恵美」という声が。

「お母さん、これからも私、頑張るから。見ててね」

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母が亡くなってから、3年が過ぎた。私は35歳になっていた。亡くなる前に一緒に行ったある場所を訪れることにした。

 

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