もう帰ってくるとは思っていなかったから、死んだということに決まれば、それはそれでいいと思っていた。諦めもつく。彼らはもういない。
「来年になったら、この部屋を処分するわ。それまでは両親の意思を尊重する」
私は窓を閉めて、再びカーテンを引いた。
「彼らが誰かのために用意した部屋よ。それが誰かは、私にはきっと永遠に解らないわ」
二人がいない以上、その答えは出ない。疑問は未消化のまま、私の心の中に放置しておくしかなかった。
「この部屋に住む予定だった人は、きっとご両親がいなくなって、がっかりしているだろうね」
ネコニャは部屋を見回した。
「誰? それは。この家の子どもは私だけよ」
腑に落ちない気持ちを抱いたままだった私は、思わず彼を睨んだ。
「そうだね」
ネコニャはふっと笑うと、さっさと部屋から出ていった。私もなるべく早く書類を作成して、通知が来るまでは二度と入るまい、と思いながらドアを閉めた。
以降私も彼も、階段から左側のエリアには行かなくなった。
「ご両親の存在は重いの?」
「髪の毛の一本に、洗濯ばさみをぶら下げたくらいの重さです」
「おもしろい表現だわ」
「あれって軽いけれど、引っ張られると痛いでしょう? 重くないのにうっとうしいじゃないですか」
「解る気がするわ。部屋のことは気になる?」
「もちろん。でももう彼らはいないのだから、私には関係ないわ。探る気もない」
「それでも洗濯ばさみくらいの重さがあるのね?」
「ええ。うっとうしいわ。嫌いだわ。早くエンドマークをつけたいわ」