【前回の記事を読む】3D CAD導入以前に多発した設計不良…当時の設計管理業務は盲サイン状態で、構造や機能の妥当性を理解できず……
1章 嘱託での設計品質改革指導
(優れたDR体制を構築、運用し企業の品質改革を促進)
『大企業病克服はルールを守ることから』
石川島播磨重工業相談役 武井 俊文 氏
当時の石播では、製品作り直しのトラブルが増えていました。調べてみるとその原因の7~8割は設計にありました。単純ミスもあれば、顧客要望を聞き取ってきた営業との打ち合わせが十分でないケースもありました。
何しろコストダウンを求める声が強く、海外から安い資材を調達したり、製造現場で作り易いデザインに変えたり、あらゆるコスト削減努力が設計部門にしわ寄せされ、仕事量が急増していたからです。
それでも気になる点がありました。設計にはトラブルを未然に防ぐさまざまなルールがあるのに、それが守られず、ないがしろにされていたことです。例えば製品図面には直接の担当者とその上司、更に部長が押印するルールでした。
経験豊富で製品にも詳しい部長が自らチェックし、ミスが起きやすい点を部下に念押しすることで完璧を期す狙いでした。ところが現実には、図面全体がきちんとチェックされないまま判だけが押され、製造現場に回されることがありました。
設計部長は他の仕事に忙殺され、チェックまで手が回らなくなっていたのでしょうが、守るべきはずのルールが守られなくなったら組織は機能しません。部長が図面を見ている余裕がないのであれば、ルールを変え、別のチェックの仕組みを取り入れないといけません。
ですが、そんな提案もありませんでした。これでは無責任の極みです。大企業病の一端がこんな所に表れていたのかもしれません。
だからこそ、ルールを守るように、社員には口を酸っぱくして言い続けました。もちろん全社の横断組織である設計合理化委員会でも議論しましたし、効率的なチェック体制のあり方も模索しました。
しかし、原点はルールを守ることにあります。できないからといって、勝手な判断でルールを無視されたら困る。あるいは昨日までやっていたという理由だけで、今日も同じルール違反を続けられても困るのです。
皆がルールを守るからこそ、社会が変化し、客先のニーズが変わった時に、陳腐化したルールを変えようということになるのです。それができていないのは、自分がルールを守らなくても何とかなるだろうという、組織に対する甘えが有るからにほかなりません。この姿勢を変えるには、社員一人一人に自立を促し、責任感を持たせるしかありません。
当社でも作り直しトラブルの件数は減ってきており、しつこく言い続けてきた効果がようやく浸透してきた面もあるのでしょう。企業に限らず、日本の組織は従来なら考えられなかったような不手際を何度も起こしています。個々人がルールを守るという当たり前の所から、仕事のやり方を考えて見る必要があるのかもしれません。(談)
引用元:日経ビジネス 2002年 6月24日号 より