一口飲んでみると、少し甘い香りがあり、スッキリしていて飲みやすい。そのようにソムリエに言うと「そうでしょ、そうでしょ」と、ニコニコしています。

当時は知りませんでしたが、これがリースリングというブドウで造った白であり、ドイツを代表する品種でした。

以来、シュタインベルガーに限らず、リースリング系の白ワインにどっぷりとハマっていきます。

リースリングにハマった最も大きな理由は、食事の邪魔をしないこと。今は、赤・白を含めていろいろなワインを飲んでいます。

例えば、カリフォルニアの赤ワインのように、アルコール度数が高くどっしり重い赤は、食事で何を合わせてもワインが圧勝します。

伝説の歌姫、マリア・カラスが交響楽団を従え、圧倒的なパワーで『椿姫』を歌うようなものです。

一方で、シュタインベルガーに代表されるリースリングは力で相手をねじ伏せるのではなく、そっと寄り添ってくれるような穏やかさと気楽さがあります。

例えるなら、ギター一本で軽やかにボサノヴァを歌うアストラッド・ジルベルトのようです。リースリングは、キリリと冷やすと、甘みが一層、引き立ち、和食にピッタリ合うところが素晴らしい。

季節ごとの食材の繊細さをしっかり出すのが和食の特徴だと思うのですが、その繊細さとリースリングは絶妙の相性なのです。

特に、みりんを使った肉じゃがや、ぶりの照り焼きには、甘い香りのリースリングが合うように思いました。

これまで飲んだワインの中で、自分の好みのど真ん中でした。

家の食事で、必ずワインを飲むようになると、ワイン・ショップで1本ずつ買うのが面倒になり、ついに12本入りのケースを買うようになりました。

友人から「このワインはケースで買ったんだよ」と聞いたとき、まとめて12本も買うとは、よほどこの人はワインが好きなんだ、私には縁がないと思っていましたが、毎日、ワインを飲むようになると、ケース買いは当たり前であることを実感しました。

以前は、生活で必要なのは「空気と水と衣食住」でしたが、今は、「空気とワインと衣食住」です。

「バッカス」で受けた「巨大な衝撃」その2が、店の奥に設置された大型のワインセラーでした。セラー内の柔らかい照明を受けてワインが一列に8本が並び、それが9列、合計72本が並んでいます。最初に見て、「あぁ、キレイだなぁ」と強烈な印象を受けました。

この中のワインは1本何万円もするんだろうと思い、ワインの種類も分からないのにじっと見つめていました。

普段は寝つきが良いのですが、その夜はベッドに入っても、なかなか寝つけません。

あのワインセラーが頭から離れないのです。キレイに並んだ72本が、華麗に着飾ったタカラジェンヌのように光っていました。

シュタインベルガーをケース買いしていることだし、ワインセラーも買おうと決心しました。ワイン虫の甘い毒が全身に回っていて、回復不能状態になっています。

 

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