第2章 未来をつくるのは人の決算書

日本人の働きを検証する

もう少し人件費と目標とする売上総利益の関係を見ていきましょう。前述したような“給料三分法”でいえば売上総利益の目標額は人件費の3倍となります。企業が社会的存在であることを認識し、自分たちの生活を成立させ、企業が成長し、社会の一員として貢献するためには自分の給料の3倍を目標として仕事をすべきであるということはすでに述べました。それをスローガンにすることよって達成できること、できないこと両方あると思います。

企業は利益目標を立て、それに沿って社員が行動します。その過程で上司が部下を集めて進捗会議を行い、目標値に届きそうにない場合、叱咤激励しながら乗り越えようとすることもあるでしょう。

その際、やる気がない、根性が足りないなどと精神論を持ち出すことが多いのが少々気になります。科学的な分析を行い、その理由を突き止めることは少ないというのが現状です。科学的に原因を特定し、それを解決するための手段を用意できるようにしなければなりません。

そのためには、まず時間価値の取り決めを行いましょう。これほど技術革新が激しく、またグローバリゼーション化が深く浸透する昨今、同じ状況を続けることは不可能です。それとともに企業は発展を目指さなければなりません。そのためには現状を打破して新しい価値を生み出さなければなりません。

もし人件費分しか売上総利益を得られなければ赤字に陥ります。また人件費の2倍相当の利益であればおそらく収支はトントンで、そこから未来を見通すことはできません。そう考えるとやはり人件費の3倍、すなわち、2倍プラス1倍の上積みが不可欠です。この上積み分をどのようにつくり上げるのかがテーマとなります。

前述しましたように、それほど時間は大切な資源です。人生のどの時点で時間の希少性に気づき、有意義に時間を使えるようになるかがその後の人生を決めていきます。つまり時間を活かすことができるか否かで人生が決まるといっても過言ではありません。

短い時間で多くの製品をつくり出すことが目標となる製造業などの現場では、時間効率が利益の決め手になります。しかし、非製造現場では時間の長さではなく、その質が重要な要素です。

次頁にある[図1][図2]のグラフは、OECDや世界銀行などのデータに基づいて世界各国の労働生産性(就業者ひとり当たりの国内総生産)を購買力平価換算ドルベースで比較したものです。