(ずいぶん静かな街だなあ)
高速道路を降り国道四号線を走ると、彬は時間が止まったかのような長閑(のどか)さを感じた。仙台市とは違い、急ぎ走る車がなく、どの車も法定速度を遵守している。
(まあ、二度と来ることはないだろうが)
彬の父亮介(りょうすけ)は宮城県亘理郡(わたりぐん)山元町(やまもとちょう)で外科医院を開業しており、母綾子(あやこ)は同じ法人の介護老人保健施設の施設長を務めていた。
彬は仙台市にある福祉系の大学を卒業後、そのまま大学院に進学。卒業後は地元に戻り後継ぎとして母親の経営する施設に就職する予定であったが、研鑽を積むためという大学側からの奨めを渋々受け入れ、はるばる岩手県にある専門学校の就職試験を受けることにしたのだった。
望まぬ彬は、鹿内(しかない)学長と亀山(かめやま)教授の手前、採用試験を受けることにしていたが、二人の意思に反して特別に準備することなく、半ば観光の心持ちでこの北上市に足を運んでいた。
故郷である宮城県の山元町や、学生時代を過ごした仙台の街並みから見える壮大な大海原の太平洋。その青い景色とは違い、西に奥羽山脈、東に北上山地の峰々に挟まれ、北上川と和賀川が合流するわずかな盆地に田起こし前の乾田が広がっていた。
その山容に左右を挟まれる形で、彬は、そのまま国道四号線を北に移動し、十五分程度で校舎に到着した。
車を停め、校舎を眺めた。
(古ぼけた小さな校舎だなあ)
それが、彬が最初に感じた印象であった。
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