翌日、アルバイトの三上が手際よく適任の派遣スタッフを探してくれて、すぐに派遣開始。

富士支店の2社目の顧客がスタートした。

(この方法はいける!)

桐谷は、すぐさま作戦を練り直した。

「全国のナイスホープの支店と取引があって、まだ富士では契約がない企業」――。そんな会社をしらみつぶしに洗い出し、一つずつ営業をかけていく。

この作戦が功を奏し、わずか1か月で新規契約を5社獲得した。

さらに、契約を獲得した企業から、関連会社、協力会社、商品を扱うメーカーなどを割り出し、芋づる式に営業をかけていった。

まったくのド新規で営業をかけるより、その企業の関連知識を持って営業をかけたほうが、圧倒的にアポイントが取れやすい。内部事情も知っているため具体的な提案ができる。

この地を這う営業が実を結び、翌月には新規契約10社を達成。

ナイスホープ富士支店の派遣の依頼も増え、五十嵐も毎日仕事に入れるようになった。

1社契約したらその周辺企業にアタックし、また1社契約が取れた周辺企業にアタックする。これを徹底的に続け、半年後には、ナイスホープ富士支店の顧客数は「54社」に到達していた。

富士支店に来た初日、北井が言った言葉が蘇る。

「半年で50社にしろ。いいか、死ぬ気で営業するんだ」

その無茶とも思えた数字を、桐谷は達成してみせたのだ。

富士支店の売上達成率は、半年前の全国最下位150位から、110位まで浮上していた。その達成感の余韻に浸る暇もなく、桐谷の元に1通の辞令がメールで届く——。

「2002年1月より、富士支店の支店長から、静岡支店の支店長を命ずる」

〈4〉

(僕が……静岡支店の支店長!?)

桐谷は、目の前に差し出された辞令を見て、しばらく呆然とした。

というのも、静岡支店は県庁所在地であり、県内で一番大きい支店である。市場規模もデカい。そのため売上ノルマも相当きつい。

市場規模と売上ノルマの大きさゆえに、プレッシャーも跳ね上がる。桐谷のような新卒1年目が担当するような支店の規模ではない。

しかも、静岡支店の状態はひどかった。半年以上、売上ノルマの未達成が続いている。毎月配信される全支店の成績表では、ほぼ毎回ドベ争い。

しかも、連日、早朝から深夜まで働かされ、疲弊した内勤スタッフが次々と辞めていく。支店長も定着せず、まさに“人が潰れる支店”だった。

次回更新は4月5日(日)、8時の予定です。

 

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