【前回の記事を読む】「なんで派遣できる人数以上に、依頼を受けるんですか?」アルバイトから、ごもっともな質問。上司と現場の板挟みはつらい

第二章 弱小の強心(きょうしん)

〈6〉

怒濤のような日々が半年続き、桐谷の連続勤務はついに180日を超えた。

静岡支店の支店長として迎えた7か月目。支店の売上ノルマの達成率は、少しずつ上昇していた。達成率75%、80%、85%……。だが肝心の100%には一度も届いていない。

桐谷の着任以前も合算すると、静岡支店はもう12か月連続の未達成。1年間ずっとノルマ割れということになる。

その数字は、本社の重役たちも当然見えている。

夜9時――。

この日は珍しく業務が早く片付いた。

桐谷は内勤スタッフを帰し、静まり返った支店で1人、残務を続けている。

室内にはエアコンの低い唸りと、桐谷がキーボードを叩く音だけが響いていた。

そのときだ。

「ガチャ」

急に支店のドアが開いた。

桐谷の背中をゾクッと冷たいものが走る。

(こんな時間に、誰だ……)

ゆっくりとパーテーションの向こうに人影が現れた。

「お疲れ」

その声を聞いた瞬間、背筋が凍った。

(北井……!)

事業本部の本部長が、なんでこんな時間に、こんなところにいるのか意味がわからない。

「お、お、お疲れさまです……ど、どうされたんですか?」

「浜松で大口の営業があってな。それより、お前ちょっとこっち来い」

北井は首を振って、応接ルームに来るように命じた。

桐谷は小走りで応接ルームに向かうと、北井は腕組みをして、椅子にどっかり腰を沈めている。

「お前、ふざけてんの?」

「え? 何をでしょうか……」

いきなりのひと言に、桐谷の心臓は飛び出しそうだった。

「静岡支店、何か月未達だかわかってんだろうが!!」テーブルをバンと叩く音が響く。

「あ、はい……」

桐谷の緊張は極限に達して言葉が出てこない。