北井は椅子から身を乗り出し、桐谷の目の前まで顔を寄せてきた。その表情は青白く、目だけが異様に光っている。そして、凄みを利かせて桐谷に迫った。
「いつまでしょっぱい営業してんだよ。12か月連続未達なんて、ナイスじゃありえねぇぞ。……お前、どうすんだ?」
――来た。北井のキラーフレーズ。
本気で詰めるとき、必ずこう言う。
「お前、どうすんだ?」
北井の言葉はナイフのように鋭利だ。
桐谷は額に汗を滲ませ、震える声を必死で抑えながら、売上見込みと営業進捗を丁寧に説明し、こう結んだ。
「……あと2か月。2か月いただければ、売上目標は達成できる見込みです」
北井は一瞬桐谷を見据え、ドスの利いた声で言い放った。
「あと2か月な。死んでも達成しろ」
それだけ言い残し、支店を出ていった。
北井が帰ったあと、桐谷はしばらく呆然とした。
(言ってしまった……“あと2か月あれば達成できます”って……)
現実と不安が交錯する。
(もし達成できなかったら、俺はどうなるのか? 二度と東京には戻れないかもしれない……)
桐谷の思考は、同じところをぐるぐると回り続けた。
ふと時計を見ると、すでに23時を回っている。
こんなとき、桐谷がいつも電話をかける相手がいた。桐谷と同じ静岡県内、ナイスホープ沼津支店の望田だ。