漁師の人たちから、

「ほれ、嬢ちゃん、これお食べよ」

と、(猫に餌を与える様に)形の崩れたホタテや、傷物の魚介類を振る舞われた。

しかし、味は遜色なく、味もさる事ながら、その鮮度は抜群にいい。更に食べた事も無い物ばかりだった。

「こっちのも食べな」

と、新鮮な魚介類を、一杯食べさせて貰う、たかちゃん。

「美味しい、美味しいよ!」

たかちゃんは、次から次へと出される食べ物を、ひたすらに口へと運ぶ。会う人会う人に美味しいという返事が挨拶の様だった。

なぜ、わざわざお婆さんが、北海道の奥尻に来たのか? それは、お婆さんの息子が、志願兵で戦場で捕虜となり、シベリアの地で亡くなっていたからだ。お婆さんの長男が亡くなったロシア領の大陸を、お婆さんは母親として、少しでも近くで見るために渡ってきたからであった。

島の小高い山の末端から見ると、北の海の向こうに霞む、ロシア領が見える。

お婆さんは、それをどうしても見たくて、そのために、この地まで足を運んだ。

もっと近くからロシアの国が見たいと、お婆さんは、更に、北海道の北端の稚内、宗谷岬まで行き、その上に、礼文島に渡り、それでも飽き足らずに、根室の納沙布岬まで北方領土を見に行った。

なぜそこまで行ったのか、それは、お婆さんは、亡くなった息子の遺骨を取りに、どうにかしてロシアへ入れる所を探していたからだ。

しかし、それは簡単には行かず、お婆さんは、シベリアで亡くなった息子の慰霊のため、日本の最北端の地で、帰らぬ息子を弔った。

帰りの汽車の中で、お婆さんはすっかり元気が無くなり、肩を落とし沈んでいる。

そのお婆さんの傍らで、それを見ている、たかちゃんも気持ちが沈んでいた。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

  

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