割り算は難しい
ある日、先生がみんなに問い掛けた。
「ここにお饅頭があります。数えたら全部で20個ありました。4人で分けるとしたら、さあ一人何個でしょうか?」
ケンは考えた。ム・ム・ム……まず先輩が8個は取るな。
日頃、ケンをいじめている年上の子をケンは思い浮かべた。そして次の子が6個、すぐ上のあの子が4個。とすれば俺に回ってくるのは2個ということになるか……。
一人何個といわれてもなあー。
隣の子はいち早く「5」と答えていた。あれ? 俺と違う。
「はい、ケンちゃんは?」
「2!」
「ブー」。
先生は「もう一度よく考えて?」と言う。
彼は思った。じゃ上の子だ。
「4!」
またみんなが「ブー」。
ケンはますます頭が混乱。もういいや!「わかりません!」となった。
またもやケンは割り算のできない子となってしまった。
後でわかったことは「みんな同じ数でいい」、ということであった。まるで水のように平らでいいのだ。少なくても自分の身辺や遊び仲間には無いことであった。
算数の「割り算」はきっと現実と違うのだ! 当たり前ではない、特別な世界なのだ。それが幼いケンの結論であった。
そして「平等、平等……」と小さくつぶやいたのであった。
それ以来ケンは、世の中には算数の「割り算」のような「平等の世界」が絶対、どこかにあるに違いないと確信した。しかし、それは一体どこにあるのだろう……。
そんな、夢のような思いがずっと頭の隅にこびりついていた。
それからずっと後のこと、彼はようやく平等の世界と出会った。
芭蕉の俳句の世界である。俳句の作者は名前のみで、肩書きをつけない。
彼は唸った。平等の世界はこんなところに潜んでいたんだ! 水のような平らな世界はやっぱりあったのだ……。
これまで抱き続けてきた割り切れない気持ちが、いっぺんに解決したような気がした。
〈芭蕉は平等の神様だ!〉