ちょっと先の話になるが、四年生のころのはなし。

うちに遊びに来た友達と二階でドスンドスンと遊んでいたら、お客さんを送り出した母が、二階にかけあがってきて、「あんたたち、マージャンおしえたるわ」とこたつのテーブルをひっくり返して、マージャンパイを広げ始めた。

三つの同じ文字か、続いた数字と、二つの同じ文字の頭をそろえる。早くそろえたもん勝ち。簡単なゲームだ。難しい点数の数え方はあるらしいが、それは母も知らない。

父だけが知っている。だから勝ったものが、黒や赤の棒を、一本ずつもらうというルール。

最初に積み木みたいなことから始まるのも、面白かった。

しばらくの間、僕たちの間ではやった。しばらくすると、自分の親にきいて専門的なことを言い出す子もいた。

ともかく、さわいではいけないのは、母が言うには、うちは商売なんだから、お店に生活が出てはいけないということ。

楽屋うらが見えるとお客さんが来なくなるということらしい。

松坂屋の美容院の見習いで習ったんだろうか。そう言われてみると、僕の友達の何人かは、大高の銀座通りでお菓子屋、しょう油屋、米屋、文ぼう具屋、焼きそば屋、肉屋、酒屋をやっているが、遊びに行くとたいてい、おくの方からお父さんかお母さんが出てきて、「ああ、服部さん、いらっしゃい。○○は部屋にいるよ」とおくに案内してくれる。

友達本人がお店でうろうろしていない。そういうもんだと、僕はこれでも心えている。友達もきっと同じように心えているのだろう。

だけど便所は一か所しかないので、台所でお菓子を食べていると、パーマのキャップをかぶってビニールのよだれかけを首にまいたお客さんがぬっとあらわれて「お便所はどこ?」と聞く。

こっちはびっくりするが教えてやる。