ある晩、下宿でUと将棋を指していたら統合失調症の症状が現われたので、真夜中にUに帰ってくれと言ったら、終電もないのに帰れとはと、怒ったが、理由を言って帰ってもらった。

すぐ睡眠剤を飲んで寝ようとしたが寝れないので名古屋の養父の家へ帰る為、新幹線に乗ったが記憶にない。

気がついたら名古屋のS病院の保護室に居た。初めそこが何処だか解らず自分が何だかも解らなかった。

生きているのか死んでいるのか? この世かあの世か? 四角窓のようなものから光がさし込み周りはまっ暗闇である。

アサオはココは何処だろう、俺はどうしたのだろうと思った。

アサオは将棋をやっていたのを思い出したがその後の記憶がない。俺は生きている。そんな事を思っていると「ギィーギィー」と扉が開き、「あっ気がついたネ」と看護婦のような姿が見えた。

アサオは「ココは何処?」と尋ねると、その人は「病院よ」と言った。

保護室から出され、K婦長の前に出された。

「昨日の事、覚えてないの?」と聞いてきた。

「分からん」と言うと、「ココは精神病院よ」とK婦長は若い声で言う。

アサオはそれを聞き少し落ち着くと、「タバコをくれ」と要求した。

Kさんが「貴方はまだ少年でしょ」と言えば「だけど高校時代から吸ってる。それに今日で二十(ハタチ)になる」と返す。

Kさんはカルテを見ると「本当に今日が二十の誕生日ね。だけどタバコは吸わない方がいいよ」と言ったが「しょうがないわネェ」と言って吸わしてくれた。

そうして療養生活が名古屋のS病院で始まった。

アサオはノビノビと病院生活を楽しんだ。朝鮮の女の娘と仲良くなったり、ソフトボールに興じたり結構快適だった。