「この前、リョウコさんが、もう全部、混ぜ交ぜでいいんだと叫んでいました」
「……五色納豆みたいですね。最近ではパクチーまで混ぜたり……ラディカルなんだと思いますよ、本来の私たちは。西洋が来るまで、定義や定型が動的であることに、あまり目くじらを立てなかった」
「創発という面で、デューイの言う〈コミュニティとしての学校〉と江戸時代の〈私塾〉、そしてネット上で話されている〈DAO(分散型自律組織)〉の志向は、けっこう似ていませんか?」
「デューイやニュースクールの時代は、国家統制や、東西の異なる価値観との対立が、非常に強い状況でした。いま、ネット界隈の一部は、ビッグテックの支配に対抗する経済システムのつくり直しを主張しています。
私たちは、なにか上のほうから強い管理抑圧がかかった場合、教条的な思想闘争とは違う形で、うまく脱出したり、はみ出そうとするチカラを発揮するのではないですかねぇ。たとえば、江戸期のひとたちのように」
「世耕さんは、そうしたチカラというかポテンシャルが、日本という場には、ずっと溜まっていると信じているんですね」
「はい。古代のモノコトづくり、東山から安土桃山の文化、江戸期のコミュニティ・ネットワーク……この国の歴史には、多様性と創造性が非常にうまく回っていた一面を感じます。世界の中で日本の私たちが生き残るために、そうした日本らしさを捨てることはないでしょう」
「この地のごちゃごちゃが、クリエイティビティの苗床……」
「ええ。価値観の選択ではなく、価値観の混ぜ合いじゃないでしょうかね。そうそう、あなたの店で、若いひとたちが仕事よりも面白そうに本気になっている雑談……なんとなく、それぞれの仕事に啓発を与え合っているような環境も、創造性の母ですよね。能美さん、つまり、私たちが〈学校〉と呼んでいる実験は、そういう場です」
ネイビーには、品の良いジェントルマンのまわりに、いつもの仲間たちが興味津々、集ってくる景色が見えた。
「世耕さん、だいたいわかりました。僕は世界や日本で、ひとびとを混ぜこぜにする、飲み屋のオヤジをやりに行けばいいわけですね。わははは」
「そう考えていただけると、そりゃいいシゴトだな。わははは」
次回更新は4月15日(水)、11時の予定です。
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