【前回の記事を読む】妊娠させてしまった高校時代の元カノを探す――手がかりは大きな病院。目星をつけると…嫌な予感がした

第四章

念のため、売店や清掃員の顔もちらちらと見ながら歩く。だが、若い人はおらず、高齢者が多いように感じる。

この点を鑑みると、遥香がここでアルバイトとして働いている可能性も低いと思われる。第一、ここで働くメリットがない。

遥香の家は、徒歩圏内に商業施設が充実した市街地に位置している。バスに乗って三十分揺られてまで通勤するのは考えにくい。可能性はゼロではないが、患者の線の方が強いように感じる。

谷岡先生がなぜ遥香の行動を把握していたのか、その点は疑問であるが、彼は卒業後の生徒の元を訪れては進路の相談に乗ったりと、他の教師よりも生徒に対して情熱的だった。

高校三年時のみ担任だった僕とは違い、遥香は二年生のときも谷岡先生が受け持つクラスに在籍していた。

谷岡先生が遥香と今でも親交があることは不思議なことではない。今日会えたらいいな。不思議と心には自信が溢れてきていた。

ここまで上手くいっている満足感が、遥香にも会えるのではないかという期待感を醸成している。

帰りのバスの中で、僕はふと昨日手土産を持って行かなかったことを思い出した。

遥香の家の近くにデパートがある。そこで買い物をしてから行こう。

夏の暑さすら吹き飛ばすような爽やかな風が、心の中を吹き抜けていった。