デパートでは最中を購入した。きっと喜んでもらえるだろう。

十四時に緑川家を訪れると、家の前は閑散としていた。家の中で人が動いているような気配はしなかった。誰もいないのか、寝静まっているのか、わからない。

少し躊躇われたが、せっかくここまで来たのだ。せめて、扉越しでも遥香と話したい。

家にいないなら、昨日の老婆でもいい。遥香のことを聞いてみたい。

今日はちゃんと話をしてみよう。

意を決して、インターホンを押す。反応はない。

もう一度押してみる。無機質な音が鳴るだけで、なにも起こらない。

誰かの足音すらも聞こえない。やはり今日は誰もいないのか。

自分の推理が突然外れ、なにを自信満々としていたのかと、客観視する。

今日は諦めて帰るとしよう。そう思って身を翻したとき、ガチャという音とともに、扉が開かれた。

 

「お待たせしてしまって、すみません」

 

半分開いた扉から顔が現れる。

それを見たとき、心臓が大きくドクンと脈打った。

あの頃の記憶が蘇ってきた。三年前のあの日、あの雨の強い日、一回だけしか見ていないのに、すぐにわかった。

遥香の母親だった。

 

「あ、えっと……」

「うちになにか?」

 

言葉を作ろうとしても、うまく口から出てくれない。情けなくも、この事態にひどく驚いてしまっている自分がいる。

こうなることは予想できたはずなのに。遥香の母親は、僕を訝しげに見ている。

 

「あの、どうかしましたか?」

 

「あ、いや。その……」

 

僕の目を見る彼女の顔は徐々に、徐々に曇っていく。

 

「もしかして、あなた……」