【前回記事を読む】ペット禁止のタワマンでこっそり小型犬を飼っていた住人。ほかの住人にバレて、管理会社に“密告”された結果…
第1章 「J」との出会い
南青山のマンション
抽選の結果は、なんと、まさかの「落選」だった。
販売会社の担当者からの申し訳なさそうな電話に、私は決して感情的にならず、こう返した。
「そうでしたか、すごく残念です。実はずっと以前、御社のマンションを購入したことがあるんです。その時は、なんと37倍の競争率で当選したんですよ! だから、今回もきっとご縁があると信じていたんですが……」
これは作り話ではなかった。
多摩川べりにあるそのマンションが大変気に入っていたこと、今は妹が住んでいること売主であるデベロッパーにとても信頼を置いていることを伝えた。
「そうでしたか。弊社のお客様だったのですね」
彼はこう続けた。
「何とかしましょう!」
「え? 何とかなるんですか?」
その営業担当者は、私が申し込んだ部屋の2階上の部屋に当選した人がキャンセルする可能性が高いと教えてくれた。
まだ個人情報保護法もなかった時代だったが、私が察するに、おそらく銀行のローン審査に通らないのではないかと彼は踏んでいたようだった。
その部屋がもしキャンセルになった場合、次の抽選会には回さずに、私に回してくれると言うのだ。
「ただし、確約は出来ませんよ」
「例えば、ご両親などからの資金援助などがあれば、キャンセルされないかもしれませんし」
彼の言うことはもっともだった。
結果、その部屋はキャンセルになった。
キャンセルの理由は、やはり「資金計画上の理由」だそうだ。よくある話で、つまりローンの審査に落ちたということのようだ。
人の不幸を喜ぶのは気が引けたけれど、私は「やっぱりご縁があった~!」とウキウキしながら、住宅ローンの審査に申し込むことにした。
せっかく回してもらえた部屋だったが、これで私もローン審査に通らなかったら、もう笑い話にしかならない。