間取りはまったく同じで、階数が上がった分、当然ながら値段は上乗せになった。億を超える買い物は初めてだった。

だが、天使は私の頭上で微笑んでくれた。

なんと、私には身分不相応だと断言した信用金庫より規模の大きな銀行から、かなりの低利で住宅ローンを借りることが出来たのだった。

「ほら、ね!」

新宿の雑踏の中で私に囁いた、あの声の主の仕業だったのかもしれないと思った。

「J」がやってきた日

南青山への引越しまであと2週間と迫ったある日、豊洲のホームセンター「Vホーム」のペットショップへ下見に行ってみた。

その当時の私は、犬を手に入れるところはペットショップ以外知らなかった。

ショップを覗いてみると、可愛い子犬たちが、3段重ねのケージに陳列されていた。チワワやダックス、トイプードルなど人気の小型犬が多かった。

私は柴犬を買うつもりだったのだが、夫は、柴犬ではなく、一番下の段にいた白黒の子犬に一目惚れしたようだった。

ボーダーコリーという聞き慣れない犬種の男の子。

まだ生後3か月にもなっていないのに、身体がやけに大きくて、窮屈そうにケージに入っていた。

「可愛い! この子がいいよ!」

「でも、まだ引越しまで2週間あるし」

「どうしようか……」

「じゃあ、来週また来てみて、この子がまだいたら、この子にしよう!」と私は夫に言った。

実はもう1匹、売れ残っていた5か月になる黒柴の女のコも気になっていたのだ。

次の週末、まだ白黒の子犬はそこにいた。

〝春のスプリングセール〟中で、2割引きになっていた。

「やっぱり、いた~!」

「可愛い~!」

抱いてみると、ずしん!と重かった。

「手足が大きいから、大きくなりそうだね」

夫はもうすっかり飼い主の顔になっていた。

売れ残りの子がよく入れられている、お店の中央に置いてある大きなサークルの中に、黒柴の女の子もまだいた。