【前回の記事を読む】「こちらが奥様かしら?」近づいてきた女性を見ると、一瞬で体調が悪くなり病院に搬送された。その女性は…

第十章 思い出せない時間

「沙優、大丈夫か。少し休んだら帰ろうか」

「貢さん、さっきの女性はどなたですか」

「ああ、ちょっとした知り合い」

「そうですか」

私は目の前が暗くなり、貧血を起こした。でも、あの女性が近づいて来た時、香水の香りがして、一言では言い表せない嫌な気分になった。

あの香水の香りは思い出せないが、身体が拒否反応を起こしたのである。頭痛で意識が遠のくのを感じていた。

いつまで経っても貢さんの記憶は蘇って来ない。私は不安に心が押し潰されそうになった。

「どうしたらいいの」

そんな矢先、私の記憶が蘇る出来事が起きた。貢さんは仕事に戻り、私が一人でマンションにいた時、一人の女性が訪ねて来た。

「はじめまして、貢と以前付き合っていた瑠美と申します」

この香水の香り。私の脳裏を次々とフラッシュバックしながら貢さんとの記憶が蘇った。手が小刻みに震えた。

「私、貢と寝たの。男と女がお酒飲んでホテル行って何もなかったなんてことあるわけないでしょ」

私は何も言葉が見つからず呆然と立ち尽くしていた。

「貢が愛しているのは私だけよ」

瑠美さんは私が一番恐れていた言葉を残して去った。私の記憶ははっきりと蘇った。

貢さんが愛しているのは瑠美さん、私じゃない。私は頭を抱えて泣き崩れた。

第十一章 蘇った記憶

俺は仕事から戻り、部屋に入ると、人気のない真っ暗な部屋に沙優がぽつんと座っていた。

「沙優、どうしたんだ、電気もつけないで」