俺は部屋の電気をつけて、沙優に近づいた。沙優はゆっくりと顔を上げて俺を見つめた。沙優の頬には涙の跡があった。
声をかけようとした瞬間、沙優は俺に抱きつき、背中に両手を回した。突然の沙優の行動に戸惑いを感じた。
「沙優、どうしたんだ、何があったんだ」
俺は何がどうなってるのか理解出来なかった。俺から一旦離れて、沙優は俺を見つめた。
潤んだ瞳、捨てられた子犬のように震えて、駄目だと自分に言い聞かせたが、ブレーキがきかない。沙優のおでこにそっとキスをした。
心臓の鼓動が加速していく。次の瞬間、俺の唇は沙優の唇で塞がれた。
えっ、今、沙優にキスされた、俺の頭はパニック状態になった。
しかし、何も確かめられないまま、沙優とキスをした。
何度も、何度も、何度も……
「貢さん、お腹が痛い」
「えっ、生まれるのか?」
俺は救急車を呼んで沙優は救急搬送された。
病院の処置室の前で、時間が止まったかのような時を過ごした。
沙優は子宮の収縮があったが、まだ生まれてくるまでには時間がかかるとのことで、しばらく入院することになった。病室に移動して、沙優は眠りについた。
俺は次の日沙優の病室へ向かった。
「沙優、おはよう、具合はどうだ?」
「大丈夫です。さっき看護師さんが『生まれてくるまでもう少し時間がかかるわね』って教えてくれました」
「そうか、俺の不注意だな。ごめん」
「そんなことありません」
「つい、沙優が可愛くて、愛おしくて、おでこにキスした」
沙優は俺の手を握った。
えっ、驚きと戸惑いが一気にやってきて、しどろもどろになった。
「貢さん、ギュッとしてください」