【前回の記事を読む】義母の家に娘を連れ込んだのが、不幸の始まりだった…母親役を奪われ、朝から晩まで世話をするようになってしまい…
人生を失い、それでも女は這い上がれるか
由香里
やがて、夕食作りに支障が出て、夫が疑問に感じた。医院が休みの日に、親子三人で遊びに出かけようといっても、「私は体調が悪いから留守番する」というのもおかしいと感じるようになっていた。
仕方なく、父娘で出かけて帰ってみると、アルコール臭もする。ついに夫が家中を調べた。出るわ、出るわ、クローゼットの服の奥、ベッドの下、天袋……空いた酒瓶が大量に出てきて、由香里のアル中を知ることになった。
母屋の女性二人の由香里を見る目が一変した。〝かわいいケイちゃんを産んでくれた大事なお嫁さん〟から〝アル中のバカ嫁〟に転落したのだ。
それから離婚まで、アッという間だった。離婚騒動の最中も、由香里はどうしたらお酒が飲めるか、しか考えられなくなっていた。ケイの親権は夫に。別れた夫は、母親と叔母に隠れて、由香里に住まいを用意してくれた。隣区のアパートである。
家財道具も揃えてくれた。そして、百万円を渡しながら、「君は病気なんだから、必ず病院に行けよ。いいね、必ずだよ」と諭した。「うん」、力なく由香里はうなずいたが、病院には行かず、毎日、酒びたりの日々を送る。百万円のほとんどが酒代に消えた。
前夫は、時々、訪ねてきて、荒れ放題の部屋を片づけ、由香里にシャワーを浴びさせた。そのたびにいくらかのお金を置いていった。もちろん、そのお金も酒代となった。
ある日、前夫と従姉妹が揃ってやってきた。二人で連絡をとり合い、相談した上でのことのようだった。二人は由香里の体をシャワーできれいにして、ダンボールにしまわれたままの服から上等なものを選んで着せ、車に乗せて、千里浜に連れてきた。
母親を失い娘を奪われ、由香里は生きる気力をなくしていた。恵子が最初に見たのが、その由香里の顔だったのだ。