「それでは、ここでさらばじゃ。向後(こうご)は合心した御魂として、空海の裡から直截に語りかけよう」

帝釈天が話し終えた途端、本堂に一陣の風が吹いた。

その風が合図となったかのように、帝釈天はふわり舞って姿を消した。まるで幻を見たかのようだった。

「驚いたのう」桓武天皇が嘆息した。

「おぬしの心に帝釈天さまがいるのだから、噂話もできんな」

「からだがやけにあたたかいのは、帝釈天さまと合心したからでしょう」空海が答えた。

「しかし、千二百年後のために今から行動せねばならぬとは、気の遠くなるような話よ。ところで、邪なるものを浄化するための計略として、そなたはどのように考えるのじゃ」

「神仏をまつる千手大社を背負い、全国津々浦々を回ります。神社仏閣にて仏の力をいただきましょう。聖地にて人々を集めて真言を唱え、また帝釈天さまの説法を伝えましょう。各地に鳥居を建立し、邪をおびき寄せ、その力を霧散させましょう。いずれ三邪神が現れましたら、地中深く封じ込めて結界を張りましょう」

空海は淀みなく話した。

考えて話したわけではない。川の水が流れるように言葉が次々と口をついて出てくるのだった。

「おう、さすがは空海よ。それでは、今回の件はそなたに一任する」

「謹んでお受けいたします」

重責を背負ったにもかかわらず、新たな旅を前にした空海の胸は高鳴るばかりだった。

 

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