イケちゃんがデートをする日になった。さわやかな天気であり絶好のドライブ日和(びより)だ。

松本駅付近で待ち合わせをして、松本インターチェンジから長野自動車道に入る。

「お昼ごはんは戸隠そばにしようね」

松原が考えたデートプランなどは聞かずに、イケちゃんは自分の要望を言ってみた。

「わかった。戸隠神社の中社(ちゅうしゃ)までは1時間半くらいかな」

「今日は奥社まで行きたいな」

再び自分の要望を伝える。

「わかった。トイレ休憩とかは早めに言ってね」

「車の酔い止め薬を飲んだから、途中で寝ちゃったらゴメンね」

「わかった。着いたら起こすよ」

二人の会話は微妙にズレてるけど、お互いに気にしていないようだ。

松原は運転に集中しているらしく、しばらく沈黙が続いている。

「ねえ、松原君。運転するのって久しぶりなの?」

「そんなことはないけど。この車は一番上の兄貴の車でさ、ちょっと運転しにくいかな」

「高級そうだけど渋い車だと思ったわ。自分の車は持ってないの?」

「通勤用の軽自動車ならあるよ。でもさ、せっかくのデートだから……」

松原なりの気遣いなのかと理解したが、まだ眠くならないので退屈だと感じる。

「ねえ、この前だけど仕事は公務員って言ってたよね。具体的には何かな?」

「あれっ、言ってなかったっけ。県立高校の教員だよ。保健体育だけどね」

「もしかしてウチの高校なの?」

「そうだよ。だから同窓会で体育館を貸してもらえたってわけさ」

二人の会話は、少しずつ盛り上がりかけている。

 

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